ひんまげけーまげ
郷ノ浦図書館で見つけた「壱岐島方言辞典」をチェックしてみると、「ケーマゲヒンマゲ」ではなく「ひんまげけーまげ」であるかもしれないことが分かった。そして、その辞書によると、「いい加減適当に処理する」という意味が書かれている。急造するという意味とは随分違うことになってしまうが、どうなんだろうか。
僕が最初に「ケーマゲヒンマゲ」という語を確認したのは「郷土史わたら」に掲載されている情報によるものだ。(※「郷土史わたら」については、「ケーマゲヒンマゲして考えてみた:郷土史」で詳しく触れています。)そこには渡良に伝えられた伝説「かいまげ」が紹介されている。内容は、神様が鬼神に向かって、一晩で向こう岸まで埋め立てることができたら村の娘をやろうと言ったことに鬼が喜び、さっそく石を運び工事が進む。そして夜が明ける前に完成しそうになったところで、神様はそれに気が付き、娘をやるつもりはなかったので、あわてて鶏をつついて鳴かせた。鬼は鶏の鳴き声を聞いて、夜が明けたと思い工事を中止した。という物語だ。そして、その物語の最後の所に、物事を急造するという意味の方言として、「ケーマゲヒンマゲ」と紹介されている。
どちらが正しいのかはよく分からないが、すでに失われてしまった方言だということかもしれない。 辞書では「ひんまげけーまげ」は形容動詞として紹介されていたので、詳しいわけではない僕が使っている「ケーマゲヒンマゲして考える」という用法は、そんなに間違えたものではなさそうだ。 「ひんまげけーまげ」と「ケーマゲヒンマゲ」が同じものだとすればだが……こうやって、語感を頼りに、言葉の意味や使い方を想像するというようなことは、情報がない時代はよくあったことだろうし、日本語の文法として、何となく正しい使い方ができてしまっていたというのは、ことばの持つ伝達の力だろうと思った。伝言ゲームのように、徐々にスムーズに変化していく。
僕の「ケーマゲヒンマゲ」はどういう意味としてできあがっていくのだろうか。